「一体貴方は何度同じことを言われたら気がすむのですか?」 「ああもう。ちょーっと買い物を忘れていただけじゃないか」 「それしかしないのですから、それくらいはちゃんとしなさい」 「そんな。他にも夜子供たちを寝かしつけたり、色々やっているよ」 「……あ、いたバカトリ! え? なに怒られてンの?」 「ああ、ちびっこまで来てしまった」 「ちびっこって言うなってんだろ! バカトリ!」 「だって実際君は小さいじゃないか。ねえ?」 「こはなは子供です。小さいのは当たり前でしょう。くだらない事を言う前に貴方はもっと反省しなさい」 「だって、絵が途中なんだ。せめてこの色が無くなるまで、もう少しぐらい待ってくれ給えよ」 「そもそも、これはなんの絵なのです」 「何って。見ての通り。あなただよ?」 「……これが……?」 「うわ。へたくそ」 「おや失敬な。子供にはこのセンスが分からないのかな?」 「白いけだまにしか見えない」 「目や嘴なんかは後で上から描くんだよ。油絵は重ね塗りが出来るんだ。知らなかったのかい」 「……兎に角、いいからお行きなさい」 「もう店はしまっていると思うんだが」 「お行きなさい」 「……無駄足と分かってて行くのは流石に……」 「……やっぱりけだまにしか見えない」 「……こら、こはな! 一体何をしようとしているんだ! 筆を下ろしなさい! ああもうなんて酷いことを」 「黒鷹。まだ私の話は終わってません」 「いやだから、もう今から行ったところで店は開いて……ああ、黒はやめなさい黒は! ちょっと、あなたも止めてくれないか!?」 「こはな」 「うん」 「思いっきりやりなさい」 「はーい!」 「ああああああ!? やめなさい! 折角の傑作の予感が!」 「……なんだ、皆ここにいたのか。夕食が出来た」 「あ、こくろ」 「こはな、黒鷹たちを呼んできてくれっていっただろ。なにやってるんだ」 「あ……ごめん」 「……もういい。それで、ご飯が出来た」 「もうそんな時間ですか。仕方ありません。行きますよ」 「はーい。今日はなに?」 「野菜炒めとサラダとおひたし」 「うっ……」 「残すなよ。 ……黒鷹、いつまでキャンパスにしがみついているんだ」 「こくろ」 「絵の具のついた手で抱きつくな」 「例え冷たくても、ご飯が野菜ばかりでも、君は私の救世主だ……!」 「……? じゃあ、残すなよ」 |