001.約束






 「行ってらっしゃい、坊ちゃん。でも夕飯までには帰ってきて下さいね」
 「分かってますよ。行ってきます」
 「じゃ、グレミオさん、タクト借りてきまーす」


 「……ねえ、タクト」
 「なんだい?」
 「なんていうかさ。いつも、泊まっていくよね」
 「そうだね」
 「でも、いつも出る時グレミオさんはああ言うよね」
 「そうだね」
 「……僕が言うのもなんだけど、いいの?」
 「何が?」
 「夕食まで、帰ってないじゃん」
 「そんなことないよ」
 「どこがよ」
 「お馬鹿? グレミオはいつだって『今日の』なんて言ってないでしょう?」
 「……あ」
 「『いつか』でも、『グレミオ達が待つ夕食までに』、帰ればそれでいいんだよ」
 「そっか、流石家出の前科持ち」
 「……シュウユウ」
 「なにってぅわっ! あぶなっ」
 「おや。避けたね。 ――まあ、そんなわけでいいんです」
 「避けたって……。 ――なんか反則くさいけど、まあいいならいいや」
 「これが僕たちの形なんです」
 「あそ」
 「約束は、ちゃんと守りますよ」










            

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