「行ってらっしゃい、坊ちゃん。でも夕飯までには帰ってきて下さいね」 「分かってますよ。行ってきます」 「じゃ、グレミオさん、タクト借りてきまーす」 「……ねえ、タクト」 「なんだい?」 「なんていうかさ。いつも、泊まっていくよね」 「そうだね」 「でも、いつも出る時グレミオさんはああ言うよね」 「そうだね」 「……僕が言うのもなんだけど、いいの?」 「何が?」 「夕食まで、帰ってないじゃん」 「そんなことないよ」 「どこがよ」 「お馬鹿? グレミオはいつだって『今日の』なんて言ってないでしょう?」 「……あ」 「『いつか』でも、『グレミオ達が待つ夕食までに』、帰ればそれでいいんだよ」 「そっか、流石家出の前科持ち」 「……シュウユウ」 「なにってぅわっ! あぶなっ」 「おや。避けたね。 ――まあ、そんなわけでいいんです」 「避けたって……。 ――なんか反則くさいけど、まあいいならいいや」 「これが僕たちの形なんです」 「あそ」 「約束は、ちゃんと守りますよ」 |