「シュウユウ、楽しそうだね。何読んでるの?」 「おータクトー。シュウからの課題ー」 「ふうん?」 「今回はハルモニア語の子供向けヒーローストーリー」 「へえ。おもしろいのかい?」 「ん。笑えるよ」 「そう……そういえば、ハルモニア語、読めるようになったんだね」 「いや」 「……?」 「知ってる話だから、なんとなくで読めるだろってシュウが」 「……ああ、なるほど」 「読んでみようか」 「そうだね」 「えー『その勇敢な少年は、鮮やかな緋色の服と、草原とその瞳の色を宿したラベンダーのバンダナをなびかせ』」 「ちょっ! ちょっとまった!」 「ん〜? なに〜? えっと『なびかせ、言いました』」 「ちょ、その本、寄越して下さい! な、『世界の英雄譚〜トランの英雄〜』!?」 「あはははははは、タクトその顔! いや、あの長髪も、たまには楽しい本よこすよな!」 「……」 「あ、その本、トランから出版で、何ヶ国語かに訳されてんだって」 「な」 「今度全部取り寄せようかなー。で、図書館に寄贈」 「シュウユウ」 「いやもう、お城に像がある人は違うね!」 「……うん、なんだい、ソウル君。なになに? 長い黒髪の格好良いお兄さんが食べたいのかい? 随分とピンポイントだね、しょうがないなもう。じゃあいこうか」 「って待てこら英雄!」 「この下にそういえばそんな感じのいたから。ちょっと待ってねソウル君」 「こらー! 人の軍師に手ェ出すなー!」 「……なんだい、普段あれだけ言ってるくせに」 「だから! 恨みつらみをこめて、殺るならこの手で!」 「……ふーん」 「……なんだよ」 「……まあ、そういうことにしてあげるよ」 「うわムカつく」 「ともかく、この本は没収」 「シュウに怒られんの僕なんだけど」 「じゃあ、やっぱり腹どころか魂を割って話を……」 「あー! もう分かった! もってけこのバカ英雄ー!」 「ふふ。シュウユウ」 「あんだよ」 「君も、この戦に勝ったら、同じ道が待ってるよ……」 「っ!?」 「すでに、マルコ君だっけ? 書くって言ってたしね」 「タクト」 「何?」 「英雄譚撲滅委員会とか作らない?」 「無理」 |