010.好きな人






 「ねーねー。好きな人っているー?」
 「どんな意味で?」
 「いない」
 「ん? そりゃ男三人集まったららぶっしょ。つかルック即答すんな。むしろあやしい」
 「そうですか、では、僕もいませんね」
 「……はぁ……」
 「無視すんなコラ。あ、でも、カスミさんは?」
 「無粋だね君は……だから、いないって」
 「えー勿体無い」
 「シュウユウ、君だってモテるでしょう」
 「えー。でもー」
 「……馬鹿馬鹿しい。僕は帰るよ」
 「ルック、付き合いが悪いですよ」
 「そうそう、あ、そういえばこの間告られてたよね。あの子、だれ?」
 「え、嘘でしょう」
 「……」
 「いやマジ。勇気あるよね。ルックにだよルックに」
 「それはそれは。で、なんて答えたんです?」
 「……」
 「なんだよ、勿体ぶんなって」
 「……別に」
 「別にはないでしょう、別には」
 「そうそう」
 「……あんた達だって、しょっちゅう誰かに告白されているだろう。自分たちはどうなんだよ」
 「丁重にお断りしてますよ」
 「うん、ごめんなさいって」
 「……僕もそんな感じだよ」
 「へえ」
 「ルックが、ごめんなさい……うわ見てみたい」
 「……本当にあんたは悪趣味だね」
 「うわ失礼」
 「そうだろう。僕はともかく、その相手は?」
 「……あー」
 「おや、ルックにしては人情派」
 「馬鹿じゃないの」
 「んー。でもまあ、三人共好きな人いないのかー。つっまんねー」
 「あんたは本当に馬鹿だよね」
 「なんだとコラ」
 「……まあまあ。でもまあなんだか寒い話題に変わりはないし、別の話でも」
 「……じゃあ好きな食べ物」
 「シチュー」
 「……」
 「オムライスだそうですよ」
 「……タクト」
 「僕は、美味しければなんでも」
 「……」
 「あーなんだよその顔」
 「ふふふ」
 「……やれやれ」


 笑う少年達。一人は心から。一人は少しの悲しみを伴って。
 彼らに共通するのは老いない体。呪われた紋章。
 本当に、馬鹿なことを聞く少年だと、笑わない少年は思った。
 











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