011.戦う理由






 「……カイル……」
 「何? 珍しいね、君から声をかけてくれるなんて」
 「何でだ……?」
 「? テッド?」
 「お前が、戦う理由はなんなんだ?」
 「……」
 「俺と同じ様に、お前もまた呪われているのに、なんで……」
 「テッド」
 「……」
 「……それは」
 「いや、いい」
 「テッド?」
 「……気にしないでくれ。 ……じゃあな」



 「おかえり」
 「……何を、しているんだカイル……」
 「日向ぼっこ」
 「ここは船室だ」
 「冗談だよ」
 「ついでにいうと俺の部屋だ」
 「うん。だから、お帰りなさい」
 「とりあえずベットから降りろ」
 「それ」
 「……何が?」
 「テーブルの上の紙袋」
 「……なんなんだよ……おい、これ」
 「おまんじゅう」
 「見れば分かる」
 「それ」
 「だから何が」
 「さっきの答え」
 「さっきのって……」
 「そう。戦う理由。好きなんだ。おまんじゅう」
 「意味が、分からない」
 「おまんじゅうが好きで、ずっとそれを食べていたい。でもって美味しいからみんなに食べてもらいたい。それで皆で美味しいねって笑いたいんだ。ずっと」
 「……」
 「でも、今はそんなことしてる場合じゃないでしょ? だから、そんな世界を作りたいんだ」
 「……そんな、理由で」
 「これが全部じゃないよ。でも、これも大事な理由の一つ」
 「……」
 「とって」
 「……ほら」
 「はい、お一つどうぞ」
 「……」
 「遠慮しないでいいよ。いっぱいあるって分かったでしょ?」
 「……ああ」
 「美味しいよね」
 「……ああ」
 「良かった」
 「……」
 「テッドの理由は?」
 「……ん?」
 「戦う理由」
 「…………借りがあるからな……」
 「それだけ?」
 「……他に何があるっていうんだ……」
 「何かはあると思うよ」
 「……知った事をいうな」
 「ごめん」
 「……」
 「美味しいね」
 「……まあな」
 「じゃあ、そろそろ姿見せないと探されちゃうから、行くね」
 「行け」
 「うん」
 「……おい、まんじゅうを忘れているぞ……」
 「忘れてないよ」
 「そこの紙袋はなんだ」
 「テッドにプレゼント」
 「はあ!? まだ10個近くあるだろ!?」
 「美味しいよ」
 「いらん!」
 「じゃあ、またね」
 「おい! …………本当に置いていきやがった」
 「あ、テッド」
 「うわっ。あ、ああ、取りに戻ったのか。ほら」
 「プレゼントだって。それより」
 「?」
 「理由。気づいたら教えてね」
 「……おい」
 「うん、ごめん。じゃあね」
 











  *幻水部屋へ*  *NEXT*