007.旅立ち






 ぎぃぎぃ。
 厳しいけれど、でも優しさを宿していた瞳。
 確かに以前、そんな目で僕を見ていてくれた瞳は、今や憎悪の冷たい炎を宿し、僕を睥睨している。
 ざぶん……。
 揺れる小船の中、投げかけられる言葉もまた冷たくて。
 どうしてこんなことになったんだろう。
 もう大分小さくなった船を眺めるのを止め、膝を抱え込む。
 ゆらゆら、ゆらゆら。
 小さな波に揺られながら、どこでおかしくなったのかを思う。
 ほんの前まで、ガイエン騎士団の一員として、皆と、スノウと一緒に、団長の元で笑っていたのに。
 今はその団長殺しの濡れ衣を着せられ、流刑となり、こうして小舟にただ一人、揺られている。
 どうしてこんなことになったんだろう。
 なんだか泣きたくなってきた。
 広い海、こんな小さな舟でただ一人。
 ああ、本当に、どうして。
 ゆらゆら、ゆらゆら。
 同じ事を止め処なく繰り返し思いながら、その時、舟の奥から、物音が聞こえた。
 驚きは一瞬、それは喜びに変わる。
 照れた様に微笑む二人を見て。
 やっぱり泣きたくなりながら。
 この旅立ちは、そんなに悪いものではないのかもしれないと思った。












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