003.太陽






 「シュウユウはね、皆の太陽なのよ」
 そう言って、ナナミは笑った。
 「じゃあ僕の太陽はナナミかな?」
 そう言うと、ナナミはさらに笑った。
 ナナミの笑顔が嬉しくて、僕も笑った。
 広い部屋の中で、二人、ただただ笑っていた。
 その内なんで笑っているのか分からなくて、それが可笑しくてまた笑って、太陽は笑ってなきゃね、とか適当な事を言ってまた笑って。笑って、笑って、笑って。


 ああ、なのに。


 僕の太陽は消えた。


 最期に、とても他愛のないお願いをされて。
 僕の太陽は消えた。
 刹那、それまでの僕の世界が壊れて。
 一瞬、何がなんだか分からなくなり。
 その時、確かに僕は狂っていて。
 だけど次の瞬間には正常に思考が機能しだす。
 僅かに開いた口。
 眉根をよせ、閉ざされた瞳。
 なのにそれが笑っているようで。
 やっぱり、太陽は笑っているんだね。
 そう思った。


 そして今。
 遺体も見せてもらえぬまま、だけどしめやかに厳粛に、葬儀が終わり。
 僕は笑っている。
 だって、僕は皆の太陽だから。
 僕を照らす絶対の光はなくなってしまったけれど。
 戦争なんだから、こんなのは僕だけじゃない。
 泣くのは簡単だけど、それは必要ない。
 軍主に必要なのは、どんな時も挫けぬ強靭な心身。
 口を開いて。
 目を細めて。
 さあ笑おう。
 僕は、輝く皆の太陽なんだから。
    











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