初めに。 詳しくは後ほど語りますが、肖像の少年=エルのパパ=仮面の男=オルフェイス=アビスと見なしております。 付属する数字はCDのジャケット番号です。 1. エルの楽園 [→ side:E →] 「私は生涯彼女を愛することはないだろう……」彼女とはエル(エリス)の母親。 雪の中、仮面の男は進む。赤い印を残しながら。 彼は、背中に傷を負っていった。(何故背中かは後記) 瀕死の中、金貨を握り締めた手で這いずりながらなんとか愛しい娘の待つ家へと辿りつく。 ドアを開け、部屋に入り……そして仮面の男は息絶え、奈落へと堕ちていく。 仮面の男の愛しい娘、エリス(愛称エル。以降エルと表記)。 エルは(曲では語られていないがパッケージから)白い髪、赤い目のアルビノの少女。 病弱に過ぎるエルは、父の死を受け入れられず、エルの現実は砕け散る。 「ねぇパパ」 「なんだい、エル」 「明日はなんの日か知っている?」 「世界で一番可愛い女の子の誕生日だよ」 「うふふふ……お誕生日プレゼントはね、絵本がいいと思うの」 楽しい一人遊び。 傍らに横たわる父の遺体はもう見えていない。 繰り返す問いは、父がよく話してくれた「楽園」の物語。 尽きる事のない「楽園」への興味。 そして、保護者のなくなったエルもまた息絶え、しかし彼女の「楽園」へと堕ちる。 3. エルの絵本 【魔女とラフレンツェ】 「かくして 楽園への扉は開かれた」 鬱蒼としげる森の中。魔女オブトローズは捨てられた赤ん坊を拾う。 その赤ん坊はラフレンツェと名づけられ、銀色の髪に緋色の瞳、雪のように白い肌の、背筋が凍るほどに美しい少女に成長した。 魔女は言う。 ラフレンツェや、忘れてはいけないよ…… ラフレンツェは、冥府の亡者からこの世界を守るための最後の門の番人であると。 純潔の結界を破られてはいけないと。 そして、時は流れオブトローズは亡くなり、ラフレンツェは一人、亡者の為に祈り、歌いながらも亡者に恨まれる悲しい存在となる。 そして、そんなラフレンツェの前に現れた、悲しい目をした麗しい竪琴の引き手、オルフェウス。 ラフレンツェはオフフェウスに恋をし、誓いを忘れていった。 結界を破られてしまうラフレンツェ。 そして、その行為ではなくその結果こそ、オルフェウスが求めていたもの。 結界が破られたことで、真に彼が欲したエウリュディケを冥府より手探りで開放、手を引き連れ戻す。 しかし、ラフレンツェは裏切りの代償として残酷な呪いをかけた……。 「もうすぐ彼が振り返ってしまう……」 ここまでが歌の内容。 そして後は私的解釈。まず、呪い。エウリュディケはオルフェイスが振り返る事を恐れていますが、有名な神話の中で、やはり同じ様に死んだ恋人エウリュディケをオフェイスは冥府から連れ戻しますが、その時に条件がありまして「冥府を出るまで決して振り返ってはいけない」のですが、神話の中で彼は振り返ってしまい、結果、エウリュディケは冥府へ戻ってしまいます。そしてオルフェイスも絶望の中死ぬわけですが、実は私の中でも意見が二つありまして、 1、神話の通り、まずは振り返ってしまい、再びエウリュディケは冥府へ、オルフェウスは死亡。(ただしこれで呪いは終わりではなく、生まれ変わっても2の条件) 2、冥府から連れ出す云々は比喩で、ラフレンツェの娘として生まれる。但し、呪いのせいでエウリュディケはアルビノとして復活。オルフェウスは死後、彷徨う亡霊のような人外となり、それを繰り返す。 という二つなのですが、どちらの内容であってもこれからの展開に支障はありません。 まずこの件はここまで。ちなみに「魔女がラフレンツェを産んだのか……」の魔女はオルドローズではなく、これからのループを意味すると思います。 5. エルの肖像 雪の中。深い森の廃屋で黒い目をした少年は肖像画を見つける。 そして少年は病的に白いその肖像画の少女に恋をする。 肖像画に描かれた妙に歪な筆跡のタイトル。 「最愛の娘エリスの8つの誕生日に」 そして やがて少年は彼の《理想》を求めるだろう やがて少年は彼の《鍵穴》を見つけるだろう やがて少年は彼の《楽園》を求めるだろう やがて少年は彼の《少女》を見つけるだろう この《》内は全てエル。彼にとってエルとはこの四つ全てを表す存在。 ……分かりづらくなるので一旦ここでこの解釈はきります。 7. エルの天秤 仮面の男には金が必要だった。 そのためには手段は問題ではなかった。 愛しい娘。病弱な娘。 彼女の命が尽きる前に、力ずくでも生かす為の金が必要だった。 そして、手段を選ばないその仕事内容の為、彼は仕事時仮面をつけていた。 今回の仕事は使用人と逃げた伯爵令嬢を連れ戻すこと。 娘さえ無事戻るなら、男は殺して構わない。 金貨の詰まった袋を受け取った仮面の男は、二人を待ち伏せる為に船頭に扮する。 作戦成功。 男は川へ流し、娘は強制送還。 仕事が終わり、彼は街にでる。愛しい娘の誕生日がもうすぐの為、プレゼントの肖像画を引き取りに。 街では結婚式。それは伯爵の娘の政略結婚の式。 そして、破滅の女神はどんな運命も見逃さない……仮面の男は、娘に背中を刺された。 徐々に薄れ行く意識の中、仮面の男は家を目指す。 9. エルの絵本 【笛吹き男とパレード】 世界の果て、楽園を目指すパレード。 先頭は笛を吹く仮面の男「アビス」。 付き従うのは心に闇を飼った者、心に深い傷を負った者。 彼らは仮面の男アビスの笛の音に逆らえない。 <例えば箱舟を信じた少女> <例えば沈んだ真珠の乙女> <例えば収穫を見誤った娘> <例えば妹を犠牲にされた姉> <例えは星屑に躍らせた女> 「ごきげんよう! 可哀想なお嬢さん。楽園パレードへようこそ!」 こうして仮面の男アビスはパレードを続けていく。 11. エルの楽園 [→ side:A →] 「side:E」で奈落と楽園に別れた仮面の男とエル。 これはエルの物語。 楽園にいるエル。 楽園で心地よい風に抱かれ、幸せなエル。 そこに、誰かの呼ぶ声。 誰かが泣いている。 気のせいかしら?(そうよ気のせいよ) 楽園で泣くはずないわ。(そうそれが楽園) だって楽園なんだもの。 ここは楽園、悲しみも苦しみもない、幸せが満ち溢れる世界。そう思い込もうとするエル。 しかし、 「本当はね 知っているの……」 エルのいた楽園。その正体。 奈落。 そしてエルは父を探し、笑顔で堕ちていく。 と、これでエリュシオン側の大体の解釈終了。 しかし、これは個々の歌、としてのみの解釈で、CD全体の解釈でかなりここでは書かれていない総合解釈をしたいと思います。 宜しければお付き合い下さいませ。 |