狂風注意




 「おはよう」
 ばん、と勢い良く扉を開けて侵入してきた人物は、むっつりとした顔でせき一番にそう言った。
 「……おはよう……」
 意外、といっていいその人物の来訪に驚きながらも、起こされた少年はそう答える。なにせ、確かに今は間違いなく……例え、太陽が昇ったばかりで、きっと窓に掛けられたカーテンを開けたのなら、それはそれは朝日が眩しい光を差し込むような、はっきりいって普通の人なら寝ている時間であっても、確かに今は朝だし、朝である以上は挨拶は「おはよう」だ。
 「……で、こんな早くから何? ルック」
 身を起こしながら垂れてきた前髪を掻き揚げつつ、部屋の持ち主たるシュウユウが眠そうに問いかける。
 しかし、それにルックは答えず、ずかずかとベットの近くまで歩み寄ると、近くの椅子に意外と綺麗に畳まれていた服をつまみあげ
 「行くよ」
 ふぁさ。
 シュウユウの方に投げながらそうとだけ言う。
 「はあ?」
 漸く冴えて来た頭で、しかし無論全く意味が分からずに更に尋ねようと顔にかかった服を除けながら視線を巡らすと、そこには素早く移動し、勝手にシュウユウの道具袋へ何やら物を詰めているルックの姿。
 「あのー? もしもし?」
 「早く着替えなよ」
 「いや、つかさ」
 「着替えさせて欲しいわけ?」
 ……。
 いや、ルックがどうやって起きてる僕に着替えさせられると。
 そう言おうとして、ルックの目がただ不機嫌なのではなく、据わっていることに気付く。
 ……?
 一体何があったんだ、と、普段はこの部屋に寄り付きもしないルックの行動……今はトンファーをベットまで持ってこようとしている……に驚きながら、果てしなく不本意な時間であるとはいえ、再度寝ることは叶わなそうなので大人しく着替えることにする。
 寝巻きを脱いで赤い服に袖を通し。スカーフを巻いて。最後に金輪を軽く磨いて額に装着する。
 「出来たね。それじゃあ行くよ」
 ほら、と道具袋にトンファーを渡して何やら口の中で呟くルック。
 転移される、と気付き、慌てて
 「ちょ、まだ顔も洗って――」



 「――なかったのに」
 言葉の途中で感じた浮遊感。
 そして着いた先には、明るい栗色の髪の少年が笑っていた。
 「うお」
 驚いて一瞬体を引き、その笑った少年の肖像画がある部屋を思い出す。
 そして
 「……こんなに朝早く、それも二人連れ立って夜這い?」
 思い出したと同時に後方からすっかり聞きなれた声。
 「おはよう。何朝からくだらないこといってんの」
 「おはようルック。おはよう、シュウユウ」
 「おはようタクト」
 体をくるりと180度回転させ、ベットから身を起こした声の主、タクトに挨拶をする。
 「悪いけど洗面借りるよ」
 「あ? うん、どうぞ。でもあまり水音立てないでね。グレミオ達はまだ寝てるから」
 「だってさ。気をつけなよ」
 「え、あ、僕」
 この状況の不自然さを全く気にせず、早速着替えながらぽんぽん会話が進んでいく二人をぼーと見ながら、ふいに話をふられ動揺する。どうやらまだ若干眠気が残っているようだ。
 「顔、洗いたいんだろ」
 「あー、うん、まあ」
 「タオルならタンスの一番下にあるはずだよ」
 「ってルック、その説明は僕がするのが普通では」
 「どっちが言ったって変わらないだろそんなの」
 「まあ確かに」
 「……あー、じゃあとりあえず借りるね」



 「さて、それじゃあ二人とも準備は出来たね」
 タクトの洗面も終わり、道具袋と獲物を担いだ二人の少年を確認してルックが言う。
 「うーん。といいますか。そもそも何なのかな? シュウユウ」
 「僕も知らない。いや、つかね。ルック。僕今日はデスクワークしないといけない日なのですが」
 「日付変更までには帰してあげるよ。それじゃ、行くよ」
 「だからどこに――」



 「着いたよ」
 シュウユウの抗議も虚しく。
 珍しく能動的なルックに連れてこられたところは、多分一度も着たことのない場所。
 ぐるりと辺りを見回すと、目に映るのは鬱蒼とした森。ただし、そこに茂る木々はあまり見たことがないような物の気がする。
 気温もなんだか上がっているような気がするし、ハイランドや、トランですらないような。
 そして何より気になるのは、着いた瞬間に視界に入った、トランのマクドール邸にもひけをとらない規模の屋敷。その外観は、まるで森にそぐわず、赤っぽいレンガと、白っぽいレンガで作られたなんとも目に痛い屋敷なのだが、門の柵越しに見える庭は荒れ果ててはいないものの、全く何も生えておらず、ただ土だけが露出している。
 そんな奇異な屋敷が森の中に唐突にあるのだから、それはもう目だって仕方ない気がするのだが、不思議とその屋敷は周囲に溶け込み、どころか、なんだか存在感が無いような気がする。
   ここは一体……?
 「ここは、初めてみる場所ですが、どこなの?」
 やはり同じ様に辺りを面白そうに見回していたタクトが首を傾げて尋ねる。
 すると、ようやく答える気になったのか、ルックはゆっくりと視線を向け、口を開いた。
 「……あんたちがまだ来たことのない国だよ。それより、今からあの屋敷の中に入るけど、中にはそれこそ見たことがないような魔物で充満していると思うけど、そいつらの退治宜しく。結構強いけど、まああんたらなら大丈夫だと思うから。でも油断しないでよね。ああ、いいかい? 大事なのは屋敷をなるべく壊さないように心がけることと、呪文は回復系しか使わないこと。それと僕は屋敷内のある魔法の核を解除するのに集中するから、退治するのはあんたら二人と思って。ああ、自分の身ぐらいは自分で護るから、それは気にしないでいいよ。分かった?」
 「……」
 「……」
 「……だから、今からあの屋敷に入るけど」
 「ああいや。それはもう分かりましたから」
 呆然とする二人に、もう一度同じことを話そうとするルックを押しとどめるタクト。
 「なんていうか、今日のルックは一味違うね?」
 いつにない饒舌と強引さに苦笑するしかなくなる。
 「それは知らないけど。じゃあ分かったんなら行くよ」
 言ってすたすたと屋敷に向う。
 とりあえず後に続く二人。
 「ねーねー。だからさ、普段ならなんか面白そうでもあるし、付き合ってもいいんだけど、今日は書類がね」
 「期限ギリギリまで溜めておくあんたが悪いんだろ。それに、今日から、ってことは提出はどうせ明後日なんだろ。だったら間に合うだろ」
 「いや、そんな軽く言うけどさ」
 「ともかく。入るよ」
 言いながら門に手をかける。すると
 「待ってくださいルック」
 タクトが真剣な声で言う。
 「なに」
 「何だかこの屋敷、嫌な気配がします」
 「あ、うん、僕も。なんか入りたくない感じ」
 危険に対してのセンサーが強い二人が顔を見合わせて頷きあう。
 普段であれば、この二人にそんなことを言われたのならば注意、警戒するものなのだが、しかしルックはあっさりと
 「それはそうさ。大丈夫、これはこけ脅しだから」
 とだけ言うと門を開け、庭へと入る。
 「は?」
 「ちょっと?」
 一歩踏みしめるごとに増していく不快感に顔を顰めながらも、仕方なしについていく。
 玄関にたどり着いた。
 「それじゃ開けるよ。武器構えて」
 「って鍵は」
 「いくよ」
 ぎぃ……
 想像したよりは小さな音を立てて扉が開く。鍵はかかっていなかったらしい。
 中へ入る三人。暗かった屋敷の壁に等間隔にかかっていたランプが勝手にぽう……と点火していく。
 その様子は幻想的、というよりは
 「ほ、ホラー?」
 だった。
 「何びびってんのさ。ホラ行くよ。扉は開けないでよね。魔物がいるだけだから」
 「あ、待てよ」
 ざかざかと脇目をふらずに進んでいくルック。
 「ところで、魔物は?」
 ぴたりと横につきながら棍を手首でぐるぐる回すタクト。
 「もうすぐ現れるよ」
 どことなくつまらなそうなタクトの様子に溜息をつきながら答えるルック。そしてその通り
 「あ、でた」
 「てか今床から生えなかった?」
 「壁や天井から、あと虚空からも出てくるよ」
 突如として現れた異形。あるものは黒く、あるものは白いが、どれも霞がかったように輪郭がぼやけている。フォルムとしては人間に近く、多少位置がズレているものの、ぎりぎりで見苦しくない程度の場所に目や口のような穴が空いている。
 「思ったよりグロくないね」
 「でろでろしているのはちょっとごめんですからね」
 確かにみたことのない魔物だったが、落ち着いて間合いを計るシュウユウとタクト。ふと、タクトが思いついたように
 「あ、ちなみに彼らの弱点とか特徴とか分かってたりします?」
 「……確か、呪文に強い。だけど呪文は使えない。まあ、普通に肉弾戦してよ」
 「了解」
 にっこりと微笑みながら、素早く踏み込む。同時に突き出した棍で、とりあえず軸足を狙ってみる。
 棍は正確に軸足を薙いだが、良く分からないその魔物はぐにゃりと関節を無視した動きであっさりと体勢を立て直し、逆に首を狙って人間というには若干長すぎる腕を突き出してきた。
 「おっと」
 ひょい、と軽い動きで避けながら再び間合いを取り直す。
 「ふぅん。そこそこ早いし。確かにちょっとは骨がありそうですね」
 トントン、とつま先でリズムを取りながら呟く。隣ではシュウユウがトンファーで魔物の頭を打ちつけながら
 「確かに。結構頑丈だしね」
 等と余裕を滲ました声で同意する。
 いつの間にか増えてきた魔物を眺めながら二人は一瞬顔を見合わせ
 『楽しいね』
 綺麗にハモった。



 「……つーか、数多すぎねー」
 小一時間は経過しただろうか。じりじりとルックの導く場所へ近づいてはいるのだが、倒しても倒しても魔物が出てくる。種類も、ゴーレム等新しい種類が入ってきたが、無論嬉しいわけがない。
 シュウユウがうんざりするのも無理はなかった。
 「……もうすぐだよ……」
 焦点が合ってない顔でぼそり、と呟くルック。魔物退治には宣言通りに一切関わっていないが、彼は彼なりに何かをしているらしく、時折何かを呻いたり呟いていたり、指先で何かを描くような動作をしている。
 「……やれやれ」
 同じく飽きてきているらしいタクトが溜息をついて、名前がないと不便だからと暫定的にシュウユウの名付けた霞ブラックの腹を突く。 ――霞ブラックは腹が、霞ホワイトは首が弱点のようだった。
 「もうコツも分かっちゃいましたし。なるべく、早く終わらせて下さいね」
 今度は霞ホワイトの首を薙いだ。
 


 「……この部屋だよ……」
 疲れた声でルックが言う。
 途中から、全部を全部いちいち相手にするのは止める事にしてどんどん先を進むことにした。
 おかげでシュウユウとタクトが守る背後には、ちょっと数えたくない数の魔物がひしめいていたが。
 やっとの終着点にほっと息をつきながら早く扉を開けるよう促すシュウユウ。
 「開けるよ……」
 かちゃ。
 ドアノブを回し、一気にドアを開ける。
 魔物が襲い掛かってくるのでは、と警戒したタクトの予想を裏切り、その部屋には魔物は一切なく、代わりにあるのはベットにタンスに本棚にクローゼット、椅子に机と、ごくごく普通の部屋。
 むしろ、高そうなカーペットやらカーテンはピンクや白、淡い藤色といった色が使われており、どことなくファンシーな部屋ですらある。
 かつかつと部屋の中心まで歩むんだルックが右手を伸ばす。すると、何も無かったはずの虚空に手の平大の、白、灰、黒、ところころと色を変える輝く球が出現した。
 両手で包み込むように球を抱えたルックが、瞳を閉じ、何かを詠うように囁く。
 すると
 「うわっ!?」
 魔物達の勢いが飛躍的に増した。
 「……あ」
 様子に気付いたルックが口を紡ぐ。
 魔物の勢いが戻った。
 「…………間違えましたね」
 勢いに押され、殴られた頬を一瞬見やったタクトぼそりと呟く。ルックの肩がぴくり、と動いた。
 「……悪かったね」
 一応詫びてから、今度は若干緊張した面持ちで再び呪を紡ぐ。
 どうも、先程と同じ音階を踏んでいるように聞こえるその言葉は、しかし今度は魔物を刺激することはなく流れていく。
 二分ほどだっただろうか。
 満足そうな溜息をついた時、それまで元気にこちらの心臓を抉ろうとしていた魔物たちの姿は一切消えていた。
 「終わったよ」
 「終わったね」
 「あー疲れた」
 くるくるとトンファーを収納して、ごきごきと肩を回すシュウユウ。結局屋敷に突入してから約2時間、ずっと戦いっぱなしだった。
 「んじゃもう魔物の心配ないね?」
 念の為に確認すると、ルックはきっぱりと頷いた。
 「おーし、じゃあ早速っ」
 うきうきと、音符でもつきそうな勢いでタンスに近づくシュウユウ。眉を顰めるルック。
 「ちょっと、あんた何を」
 「屋敷、宝物探しツアー!」
 「ちょ、やめろこの阿呆っ!」
 がらっ
 慌てて叫んだルックの言葉も虚しく。
 勢いのいい台詞と共に、精巧な模様が彫られているタンスの引き出しは開けられた。
 「……」
 「……」
 「……の、馬鹿……!」
 開けられたタンスに入っていたものは。
 明らかに、大人の女性用の下着だった。
 「……えーと」
 普段の家捜しならば、開けた引き出しの表面に惑わされず、きちんと中までかき混ぜるのだが。
 整然と並ぶ色とりどりの下着の前に動揺を隠せない。
 「いい加減、閉めろこの阿呆っ!」
 どうしよう、と視線を逸らさぬまま固まったシュウユウの脇からルックが手を伸ばし引き出しを閉める。
 「あ」
 「あ、じゃないよあんたは! 一体何をするのかと思えば……!」
 明らかに怒っているルック。
 シュウユウはパタパタと手をふりながら
 「えー。だって、新しいところに来たら家捜しって、鉄則じゃん?」
 何をいまさらねぇ? とタクトに尋ねると、タクトも頷きながら
 「確かに。僕もやりましたし、君は僕の屋敷まで探してくれた子だからねぇ。しかも僕の目の前で」
 「あ、だっけ?」
 「ええ。グレミオが僕そっくりだと笑ってましたから。 ……でもね、シュウユウ。この屋敷でそれはやらない方がいいね」
 どこかピントのズレたグレミオの笑顔を思い出しながらタクトがそう言うと、シュウユウは不思議そうに
 「えー? なんでー?」
 「だってここはきっと……」
 そこで言葉を区切り、険しい目をしたルックの方を見る。
 「だよねルック?」
 「…………そう、ここは僕の……というより、レックナート様のお屋敷の一つだよ」
 肩をすくめて同意するルック。やはり、と頷くタクト。はあ!? と意気込むシュウユウ。
 「って待てよ! じゃあなんであんな魔物だらけなわけ!?」
 「……レックナート様は色々な所にお屋敷を構えていらっしゃるけど、今主に生活なされているのは魔術師の塔、と呼ばれるあそこだから」
 問い詰められ、しぶしぶ、といった様子で語りだすルック。
 「でも各お屋敷にはそれぞれかなり貴重な物が保管されているし、レックナート様もご自身の身を隠さなくてはいけない時もあるから、普段使わない屋敷には人避けの結界と、それを突破して入ってきた賊対策に、誰かが不当に侵入したら予め召喚しておいた門の向うの魔物とかが防衛する仕掛けを作っていたんだけど……」
 「へえ。ああ、だからあんなに近寄りたくない気がしたんだ。それで?」
 「……大元の核が壊れたみたいで、各屋敷で魔物が暴れだしたみたいなんだよね……」
 「……それは、その核を直せば」
 「直したよ。当然だろ。でも、それでもこの屋敷みたいに戻らない所もあって。そういうところはもう、直接その屋敷に出向いてその屋敷の核を直すしかないんだよね……」
 目を伏せたまま切なげに話すルック。うわあ、と話を聞いていたシュウユウは
 「レックナート様は直さないの」
 「……あの方はお忙しいし、それにあまり外に出ない方がいいんだよ……」
 「だから、弟子のルックがこうして直しにってこと?」
 「そうなるね……」
 何かを堪えるように目をきつく閉じて頷くルック。弟子も大変だなぁ、と巻き込まれたシュウユウは頷きながら、残る疑問を口にする。
 「で、なんで壊れたの?」
 「……」
 特になんにも考えずに口に出した質問に、ルックの顔がはっきりと強張った。
 「ルック……?」
 その表情に不穏な物を感じ取ったシュウユウの声も低くなる。
 「もしかして、ルックの所為?」
 ずばりそういうと、図星だったらしく、白い顔に一気に朱が上った。
 「なにやってんだよルッくん」
 呆れたようにそう言うと、ルックはきっとシュウユウを睨みつけ
 「……ッ! 五月蝿いな! 僕だってもっとこまめにメンテナンスしたかったさ! でも毎日毎日一日中連れ回すのはそっちだろ!? 僕だってねぇ! 疲れるんだよ! おまけに塔に戻る度にあれこれを言い渡されて……! 石版の管理もしなきゃいけないし! いくら僕でもね! 魔力に限界はあるわけ! あんた分かってんのねぇ!? たまには休みたいなーって思ってもくっだんない用で引っ張り出される僕の気持ち! 交易なんて、テレポートと瞬きの鏡の連続でしかないんだから、どうせ荷物なんか持たない僕より熊とか青いのとか! いちいちあんたの言う事聞いてくれる騎士達とか! 誰でもいいだろう!? なんで必ず僕を連れて行くのさ!? ことあるごとに軍主命令軍主命令って! いい加減にしてくれるちょっと!? 僕はもう疲れたんだよ本当に!」
 「るるるるルック!? ちょ、ねぇ落ち着いて」
 「五月蝿いよ! それより! 今日中に全部片付けなきゃいけなくてあと5件回るからそのつもりで! ちなみに言っておくけど一応始めだから一番規模の小さい館だからねここ分かった!? そうそう勿論家捜しなんてさせないからね! じゃあ時間ないしもう行くよ準備してあと五分以内ッ」
 「タクト、どうしようルックが壊れた」
 「うーん。余程鬱屈していたんでしょうねー」
 「どうしする……」
 「準備するしかないんじゃないですか? ルックの転移じゃないと帰れないし」
 「あと何件って言ったっけ……」
 「5件だって」
 「あと4分ッ! もういいのかい!?」
 「うわ、ちょっと待って!」



 結局帰れたのは日も充分に暮れてからだったとか。



 「だーかーら! 今日は本当にやろうと思ってたんだってば! 攫われたのはこっちなの!」
 「とにかく。明日中にこれらの書類の決済をして下さいね」
 「ねえ、僕今日凄い疲れたのね。一日くらい……」
 「明日中にお願いします」
 「…………この鬼軍師…………」



                      END





 キリ番100、『たまには巻き込み型ルック』でした。
 楽しいお題、ありがとうございましたマヨさん!
 巻き込み型でもやっぱり微妙に不幸で、そして何よりこんな捏造妄想設定ばかりの作品をお出ししてよいのか甚だ不安ではございますが、レックナートが魔術師の塔の他に屋敷をいくつか持っている、というのは本当のはずです……。
 このようなもので宜しければ、マヨさん、どうぞお納め下さいませ。
 それでは100HITありがとうございました!   




  *キリ番へ*