54,play the role of Satan (魔王の役を演じる)






 「えー! うそ、なんで銀朱なんだよー」
 「おやおや。まさか若輩君とはね」
 「……お前ら、それはどういう意味だ」
 「んー? 何ー? 楽しそーダネ」
 「あ、いちばんおっきいおれー」
 「やあ、大君」
 「やあ黒鷹サン、今日和。なにしてんの?」
 「これー」
 「あみだくじだね……へぇ」
 「そう、なんと若輩君が魔王玄冬の役を引き当ててしまったんだよ。私がやりたかったんだけどねぇ」
 「……俺は別にそもそもこんな遊び」
 「おおっとストップ! ひよこの前で何を言うんだい若輩君は」
 「そうだよ! 銀朱が救世主のやくやりたくないってうるさいから、今日だけとくべつにあみだしてやったんだぞ!」
 「あははは、ネェ、黒鷹サンは何の役なの?」
 「ん? ええと……ああ、私が、やれやれ。若輩君だ。本当に格好悪い役は苦手なんだけどなぁ」
 「じゃあおれが救世主? そのままじゃん」
 「ネェ、じゃあ俺に救世主譲ってくれない?」
 「えー? じゃあ俺はー?」
 「あの人は? レアでしょ?」
 「しろふくろう? うん、じゃあいいよ」
 「……待て、なんだか凄く嫌な予感が」
 「ははははは、じゃあそういうことで若輩君、魔王役頑張り給え」
 「な、ちょ、」
 「えーと。じゃあ、救世主よ、時はみちました」
 「お、難しい言葉しってるねー? ……ああ、ごめんネ。 ――白梟、それは?」
 「魔王玄冬がついにあらわれたのです」
 「そんな、じゃあ世界は」
 「さあ、救世主よ、今銀朱隊長があしどめをしているはずです。いってそのやくめをはたしなさい」
 「……うーん。ひよこ、いきなりのあの人の役なのに上手いなー」
 「……」
 「こらこら、どうしたんだい若輩君。早く魔王として私を追い詰めないと」
 「……待て、本当にこのま」
 「うわああああああああ!? く、来るな魔王玄冬! それ以上近づかないでくれ!」
 「な、おい貴様」
 「ぐはああぁぁぁっ!」
 「だから」
 「そんな! 魔王玄冬よ! お前はお前を生み出した我々が悪いというのか! 戦争を繰り返し続ける我々が!」
 「だ、ど、どうあっても俺に魔王玄冬を」
 「うあああああ! 救世主、救世主はまだかー!」
 「あはははは。あ、呼ばれた。 ――そこまでだ魔王玄冬!」
 「救世主!」
 「大丈夫か銀朱隊長!?」
 「あ、ああなんとか! やはり俺一人じゃ到底魔王玄冬には敵わないようだ!」
 「おまえら好き勝手」
 「そうか、だが俺が来たからには安心しろ! さあ、覚悟しろ魔王玄冬っ!」
 「わ、な、おい剣を抜くんじゃ」
 「何いいいっ!?」
 「な、なんだ!? 俺は何にも」
 「……流石大君だなあ……」
 「銀朱隊長!」
 「なんだい? じゃなかった、なんでしょうか!」
 「思ったより魔王玄冬は手強い、手を貸してくれないか!?」
 「分かった、及ばずながらこの銀朱、力を貸そう!」
 「ま、二人がかりとは卑怯」
 「うわああああああ!」
 「くそぉおおおお!!」
 「な、これ以上、おい」
 「な、なんて力だ魔王玄冬!」
 「俺ら二人がかりでもこんな……白梟! どうかここに現れて力を貸してくれ!」
 「な――」
 「わー! おもしろーい! じゃなくて、私を呼びましたね、救世主」
 「白梟、来てくれると思ったよ!」
 「じゃあ三人で愛と勇気と希望の名の下に魔王玄冬を退治しようか!」
 『おーっ!』
 「何ぃーーーーー!?」



 「あははははは、アーァ、面白かった」
 「おれもー」
 「はっはっは。偶にはこういうのも面白いものだね」
 「でもおれが魔王玄冬のときはやだかんな」
 「はいはい。ひよこにそんなことしないさ」
 「ひよこっていうなバカトリ」
 「ははははは、あ、起きた」
 「やー隊長、意外と早く起きたねー」
 「う……」
 「銀朱なさけなーい」
 「お、俺は……? ……! お、お前ら!」
 「んー? どーしたの隊長」
 「貴様等、加減というものを」
 「したよ、ちゃんと」
 「でなければ若輩君が起きる事はないしねぇ」
 「だ! だとしても! 完全に遊びの範疇を! 越えているだろうが!」
 「えー」
 「えー、ではない!」
 「でも、部屋は無事だったでショ?」
 「お前は! それが褒められる事だとでも! 思っているのか!?」
 「ウン。前なら確実に壊していたよ? 成長を、年長者なら褒めないと」
 「うんうん、大くんは偉いなー」
 「あはは。ほら、黒鷹サンは褒めてくれたよー」
 「き、貴様等……!」
 「はっはっは、なんだか気が短い若輩君もいるし、なにより私はお腹が空いた! お昼を食べにいかないか?」
 「あ、いいね」
 「いくー!」
 「こら、話は終わって、おい……! 待て……!」


 魔王の役を演じるのは(時に)とても大変。 




  *花帰葬部屋へ*