31,真実と偽り






 「あっバカトリちょっとー」
 「あっはっは。なんだいひよこ? いきなり失礼だね君は」
 「ひよこって言うなばかー!」
 「はいはい、それでひよこ、なんだい?」
 「うー……あのさ、この間みんなで「とう」に行ったよね」
 「ああー管理者の塔だね、うん、それがどうしたのかな?」
 「でさ、白梟の言う主ってやつとか、バカトリのあくしゅみな部屋も見たけど」
 「うーん、私の主でもあるんだけどね。それに私の部屋のどこが趣味が悪いと言うんだい。洗練された、いい部屋だったじゃないか!」
 「まっかで目がちかちかしたよ。へたくそな絵とかあるし。でさ」
 「…………」
 「ああもう、いじけるなよ黒鷹。ごめんてば。それでさ」
 「……ああ」
 「白梟の部屋はいかなかったけど、あるんだよね?」
 「………………」
 「見たかったけど、見れなくてさ。タカは見たことあるの?」
 「……………………うーん」
 「おっきい僕にも聞いたけど見たことないって言ってたしー」
 「ああ、大君ね」
 「うん、あれ? なんでそっちってわかったの?」
   「というわけで大君、バレてるから出てき給えよ」
 「アレー? バレてたんだ? 自信あったんだけどなー」
 「まあねぇ。何の悪戯かと密かに警戒していたんだけどね、そんな質問だったらなんで隠れていたんだい?」
 「エー。なんとなくだけどー。俺が聞いたらちゃんと答えてくれたー?」
 「やれやれ。一体何を考えているのか分かるような分からないような。まあ、君も照れ屋さんだからなぁ、コノォ」
 「アッハッハ、やめてよ黒鷹サン。斬っちゃうよ」
 「はははははは、怖いな君は。まあ、私ぐらいしかこんなことしないんだからいいじゃないか!」
 「アハハ、ところで黒鷹サン、質問答えてよ」
 「そうだよバカトリー」
 「おやおや。はぐらかす心算はなかったんだけどね。 ……うん、勿論あるよ。当然だろう?」
 「ンーまあそうだよネ」
 「どんな部屋?」
 「うーん、勝手に言ったら怒られそうだな。どうしても言わなくては駄目かい?」
 「だめー!」
 「俺も知りたいなァー」
 「ってさり気無くドアを塞ぐんじゃないよ君達は。そんなことしても無駄なのは知っての通りだろう?」
 「ちっちゃい俺はともかく、俺のは単なる意思表示ってかボディランゲージなのは黒鷹サンも知っての通りでショ?」
 「あーはいはい。もうしょうがないな。言いふらさないかい?」
 「うん!」
 「シナイシナイ」
 「……あの文官君とか、賭けの商品でもなんでも言っちゃだめだよ?」
 「信用してよ黒鷹サン」
 「とか言って君は平気で嘘つくからなあー。 ――まあいいだろう、そんなに特殊な部屋じゃないしね……まあ普通の部屋だよ」
 「どんなー?」
 「ひょっとしたら白くてレースで繊細なイメージがあるのかも知れないけどね。まあなんと言うか、あの塔は銀で冷たいイメージだし、実際中は普通に暮らすには寒くてね。特に雪の降るような日はもうとんでもなくてね」
 「ふぅん、それで?」
 「うん、なんていうかね、まあ私の部屋に似ているよ。色は淡いピンクでね、壁に厚いカーテン、床には絨毯。絵はかかってないけど、代わりに色んな小物が置いてるよ。花瓶とか。それで、ビロード付きのベットがあるんだ。その代わり長椅子はなくて、普通の椅子が二脚。三人で住んでいて何故二脚かは……まあ、察してくれると嬉しいよ……そんなところかな? 満足かい?」
 「へー。白梟そんな部屋なんだー。やっぱり見たかったー」
 「アリガト、黒鷹サン」
 「いや? しかし、あの人に聞けば答えてくれると思うけどねぇ」
 「アハハハ。俺が照れ屋って、黒鷹サンがいったんでショ?」
 「ああ、それはそうだね。うん、じゃあ私はこのあたりで失礼するよ!」
 「うん、さよーならー」
 「タカばいばーい」



 「……で、ちっちゃい俺?」
 「なに? おっきい僕?」
 「今の話、信じた?」
 「え?」
 「ソッカ信じた? 可愛いなあちっちゃい俺」
 「えー! タカ嘘ついたの!? そうなの!?」
 「ウン、多分ね。 ……まあ正直に答えてくれるとは思わなかったけどネ」
 「うータカのばかー。バカトリー」
 「まあ、あの人も複雑なヒトだからね」
 「でもさ、じゃあなんで聞けっていったんだよ」
 「……ンー。まあ、なんでもいいジャン?」
 「二人とも変なのー。えーじゃあ白梟にききにいくー?」
 「止めた方がいいかも」
 「なんでー?」
 「俺たちが塔に行った時に案内されなかったから。 ……ああもうそんな顔すんなって。もうちょっと大人になったら分かるヨ。じゃあ俺は隊長でもからかいにいくかなー」
 「あ、僕もいくー」
 「おーし、じゃァ競争! ごー!」
 「わ! まてー!」



 聞けば答えてくれるけど、なんとなく聞きづらい事。
   
   




  *花帰葬部屋へ*