「ええと、あ、スプーンが足りないですね」 「ふふ。お急ぎなさい。もう少しで来ますよ」 「あ、はい! ありがとうございます!」 「それにしても、頑張りましたね」 「はい! ……喜んでいただけるるでしょうか……」 「大丈夫です。あの子に嫌いな物はありませんから」 「そうだといいんですけど……」 「自信を持ちなさい。 ……来たようですね」 「……ああ、いらしたんですかレックナート様……この匂いは……」 「待ってましたよルック」 「ルック様! どうぞ座って下さい」 「セラ。これは一体」 「お座りなさいルック。セラがあなた……私達の為に、随分前から昼食を用意してくれたんですよ」 「本当はレックナート様にもないしょにしたかったんですが、途中で見つかってしまいました」 「そう……これ、セラが全部一人で作ったのかい。随分あるけど」 「はい! 初めてでしたが、楽しかったです」 「そう」 「あ、あの、でも、一応味見したんですけど……あの」 「いいよ。セラも座りなよ。食べよう」 「あ、はい! じゃあスープ持ってきます!」 「スープもあるの」 「はい!」 「デザートも作ってましたよ、ルック」 「レックナート様は、ずっとご覧になっていたんですか」 「ええ。手伝おうかとも思ったのですが、一人でやりたいようでしたので」 「そうですね……その方がよろしいかと……」 「あらルック。なんだか含みがあるようですが……私も少しは上達したんですよ?」 「……少し、ですか」 「とりあえず、口の中に炭鉱が出来ることはありませんよ」 「……」 「お待たせしました!」 「ご苦労様です」 「……ありがとう、セラ」 「いえ、では、あの」 「そうですね。頂きます、セラ」 「いただきます」 「はい、ど、どうぞ!」 「……」 「……ふふ」 「あ……」 「……何? 二人とも、何か……」 「あ、いえ、その……」 「ふふ、言った通りでしょう? セラ。ルックはきっとオムライスから食べますよって」 「な、レックナート様!」 「いいではありませんか。 ――美味しいですよ、セラ」 「本当ですか、ありがとうございます」 「ルック」 「……うん、改善点はあるけど、美味しいよ、セラ。ありがとう」 「! ありがとうございます!」 「さあ、セラもお食べなさい」 「はい!」 「それにしても、本当に随分作ったね……」 「あ、食べきれないですか……ごめんなさい……」 「いや、食べるよ。大丈夫。でも、今度作る時は僕に言って」 「え?」 「調味料とかも、どこにあるか分からなくて困っただろう。次は一緒に作ろう」 「はい!」 「ふふふ、それでは私もたまには」 「レックナート様は結構です」 「……ルック」 「どうしてですか? ルック様」 「お師匠様に作らせるなんて恐れ多いだろう?」 「あ、そうですね」 「……ルック」 「はっきり申しましょうか? レックナート様」 「……可愛くないですよ、ルック」 「ありがたいです。レックナート様」 「あ、あの、ルック様? レックナート様?」 「ああ、大丈夫、なんでもないよ。セラ。そこのパイ包み取ってくれる?」 「あ、はい! あの、ちょっと焦げちゃったり破れてたり……」 「大丈夫。美味しいよ」 「ルック様」 「私にもいただけますか?」 「はい、どうぞレックナート様!」 「……ええ、美味しいですよ、セラ」 「ありがとうございます!」 とても平和な真昼の宴。 |