054.真昼の宴






 「ええと、あ、スプーンが足りないですね」
 「ふふ。お急ぎなさい。もう少しで来ますよ」
 「あ、はい! ありがとうございます!」
 「それにしても、頑張りましたね」
 「はい! ……喜んでいただけるるでしょうか……」
 「大丈夫です。あの子に嫌いな物はありませんから」
 「そうだといいんですけど……」
 「自信を持ちなさい。 ……来たようですね」
 「……ああ、いらしたんですかレックナート様……この匂いは……」
 「待ってましたよルック」
 「ルック様! どうぞ座って下さい」
 「セラ。これは一体」
 「お座りなさいルック。セラがあなた……私達の為に、随分前から昼食を用意してくれたんですよ」
 「本当はレックナート様にもないしょにしたかったんですが、途中で見つかってしまいました」
 「そう……これ、セラが全部一人で作ったのかい。随分あるけど」
 「はい! 初めてでしたが、楽しかったです」
 「そう」
 「あ、あの、でも、一応味見したんですけど……あの」
 「いいよ。セラも座りなよ。食べよう」
 「あ、はい! じゃあスープ持ってきます!」
 「スープもあるの」
 「はい!」
 「デザートも作ってましたよ、ルック」
 「レックナート様は、ずっとご覧になっていたんですか」
 「ええ。手伝おうかとも思ったのですが、一人でやりたいようでしたので」
 「そうですね……その方がよろしいかと……」
 「あらルック。なんだか含みがあるようですが……私も少しは上達したんですよ?」
 「……少し、ですか」
 「とりあえず、口の中に炭鉱が出来ることはありませんよ」
 「……」
 「お待たせしました!」
 「ご苦労様です」
 「……ありがとう、セラ」
 「いえ、では、あの」
 「そうですね。頂きます、セラ」
 「いただきます」
 「はい、ど、どうぞ!」
 「……」
 「……ふふ」
 「あ……」
 「……何? 二人とも、何か……」
 「あ、いえ、その……」
 「ふふ、言った通りでしょう? セラ。ルックはきっとオムライスから食べますよって」
 「な、レックナート様!」
 「いいではありませんか。 ――美味しいですよ、セラ」
 「本当ですか、ありがとうございます」
 「ルック」
 「……うん、改善点はあるけど、美味しいよ、セラ。ありがとう」
 「! ありがとうございます!」
 「さあ、セラもお食べなさい」
 「はい!」
 「それにしても、本当に随分作ったね……」
 「あ、食べきれないですか……ごめんなさい……」
 「いや、食べるよ。大丈夫。でも、今度作る時は僕に言って」
 「え?」
 「調味料とかも、どこにあるか分からなくて困っただろう。次は一緒に作ろう」
 「はい!」
 「ふふふ、それでは私もたまには」
 「レックナート様は結構です」
 「……ルック」
 「どうしてですか? ルック様」
 「お師匠様に作らせるなんて恐れ多いだろう?」
 「あ、そうですね」
 「……ルック」
 「はっきり申しましょうか? レックナート様」
 「……可愛くないですよ、ルック」
 「ありがたいです。レックナート様」
 「あ、あの、ルック様? レックナート様?」
 「ああ、大丈夫、なんでもないよ。セラ。そこのパイ包み取ってくれる?」
 「あ、はい! あの、ちょっと焦げちゃったり破れてたり……」
 「大丈夫。美味しいよ」
 「ルック様」
 「私にもいただけますか?」
 「はい、どうぞレックナート様!」
 「……ええ、美味しいですよ、セラ」
 「ありがとうございます!」
 とても平和な真昼の宴。 

 










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