必死に、神に祈った。 薄暗い部屋の中。僅かに月光が射す窓辺で、両の手を組み、瞳を閉じて。 微かに漏れる冷気にさらされ、すっかり指が凍えて、触れ合う己が指にすら痛みを覚えるけれど。 けれどもこの身の震えが止まらないのはその寒さの所為だけじゃないのが確信できて。 閉ざされた瞼から熱い滴が零れ落ち、だけどすぐにそれは身体から熱を奪うだけの存在となる。 それでも祈るのを止めない。止められない。 ああ、どうか、どうか。 懸命に、懸命に。ただただ祈り続ける。 全ての手を尽くし、それでも免れなかった以上、最早、それしか道は残されていなかった。 暗く凍える部屋の中。 ただ、一心不乱に祈り、その時を待つ。 災厄が、自分だけに降りかかるのなら、ここまで祈る事もなかったかもしれない。 ああ、だけど混沌は大事な人たちを簡単にその腕に抱きこむ。 そして、きっと、自分だけは無事だろうから。 荒涼たる世界、倒れ伏す人々の中、自分だけが立ちすくむのが容易に想像できて。 ああ、どうか、お救い下さい。 どれほどの時が経ったのだろう。 終わりを告げる足音が近づいてくるのに気づき、多分諦念と絶望を抱えた瞳を開け、この部屋にある唯一のドアを見つめる。 迷いのない足音が止まった。 息を呑み、見つめていると眩い光と共についにドアが開いた。 「あれー? シュウユウ、なんで電気つけてないの?」 「やあ、もう料理出来たの?」 「うん! 全部新作で、結構自信あるんだから! もう皆待ってるよ!」 「ありがとう、ナナミ」 ああ、どうか死人が出ませんように! |